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ご挨拶

金子 郁容

エネルギーと生活情報を統合するライフインフラ
ー グローバルトレンドから住民レベルの適応策へ


慶應義塾大学 政策・メディア研究科 教授

金子 郁容 KANEKO, Ikuyo

2013年9月にICCP(気候変動に関する政府間パネル)による最新の報告書(作業部会第五次報告書)が発表されました。「今世紀末までに気温は最大で4.8度、海面は82cm上昇する」、「温暖化の95%は人が原因である」、「人の活動による地球温暖化が確実に進み、時とともに対策が難しくなっている、今こそ、行動を起こさないといけない」などのメッセージが発せられました。

このようなグローバルトレンドについては、われわれひとりひとりが真摯に受け止め、できることから行動することが重要です。グリーンICTライフインフラプロジェクトは、そのような認識を十分に踏まえた上で、その研究対象を、自治体や自治体の特定の地域などローカルな地域における気候変動による住民ひとりひとりの脆弱性への影響と対応を考察の対象としています。

緩和策だけでは対応しきれない気候変動の悪影響に備える適応策が重要との認識が、近年、高まっている中、本プロジェクトでは、主に二つの過疎自治体と東京近郊をフィールドにして、メッシュデータを用いて気候変動の自治体への影響を推定し地域の脆弱性分析を行います。その上で、センサネットワーク等を活用した「グリーン社会ICTライフインフラ」を開発し、家庭や事業体等、地域エネルギーの需給の情報と共に、健康・医療、農業、災害時の対応等という生活に密着した情報をモニタリングし、統合的なマネジメントシステムのプロトタイプを構築し、その効果を実証します。

フィールドになる自治体である宮城県栗原市は10町村が合併したため集落が点在しており緊急時に集落が孤立する危険性があり、東京都奥多摩町は町の面積の94%が森林で山や谷が深く、高齢化率が40%を超えているなど、それぞれ、気候変動による脆弱性を抱えています。しかし、気候変動の影響はネガティブなものばかりではなく、例えば、近い将来、気候温暖化によって栗原市がイチゴの栽培に適した地域になることが予想されるなど、適切なモニタリングと統合的マネジメントをするなら、地域として「明るい未来」が開かれる可能性もあります。

環境問題は技術開発や法制度などというトップダウンの施策だけでは解決できません。本プロジェクトでは、適応策を実効あるものにするために、地域コミュニティのソーシャルキャピタルを高めるというボトムアップアプローチに注目します。市民レベルの日常の相互支援活動の積み重ねが、真の意味でのresilientな新しい社会を形成することにつながることを実証したいと考えています。

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